2019年9月13日〜14日

遡上モノ探索‘19

(俺)



 渓流釣りシーズンもいよいよ終盤だ。

 今回は約一年ぶりとなるI沢を、一泊コースでじっくり楽しんでみよう。

 AM8時。曇り空の下、久しぶりのI沢に降り立った。

一年ぶりのI沢

 気温は多分20℃程度だろう。湿度も感じる事無く、先ずは快適な雰囲気だ。

 川の水量は標準といったところか。

 泊まり掛け装備の重荷を背負って遡行し始めるが、周囲に真新しい人間の足跡は無いようだ。

 よし、なんとかフレッシュな環境を独占出来そうだな。

 今回の目的は、やはり遡上してきた個体だ。

 しかもそれを、不慣れな疑似餌でTRYする為に、本業である餌釣りの竿や道具は置いてきてしまったのだ。

 そしてルアーをメインに、サブウェポンとしてテンカラに初挑戦という、初めての疑似餌二刀流でもある。

 目論み通りの結果を得られるだろうか。

 入渓地点から20分程上ったところで、渓相の良さに耐えきれなくなった。

 本来日帰り釣行でも余裕の行程なので、テンバ予定地までの距離は知れている。

 そんな訳で、途中からルアーロッドを出して釣り上っていく事とした。

曇り空の下

 最初はミノーでやってみよう。

 相変わらずの好渓相の中、丁寧に攻めながらゆっくり進む。

 しかし反応どころか走る魚影さえも見えないまま、だいぶ時間が経ってしまった。

 どうしたことか、I沢。

 特に川が荒れた様子もないし、釣り尽くされる程にたくさんの釣り人が入る場所でもないと思うが・・。

 あまりに反応が無いのでだんだん細かいポイントはスルーするようになってきた。

 水深のあるポイントを重視して、尚も釣り上る。

 そして10時半頃、テンバに程良いポイントに到達。

 ここは昨年テンバにした所よりも少し上流で、水際より高い位置に細かい砂利の平地があって使い易い。

 目の前には少し浅いが広い淵もあって、マズメ時に軽く竿を出すにも適している。

 とりあえず重荷を降ろして一息入れる。

沢は荒れてはいないが

 ここまでは釣果どころか一匹の魚影さえ見えない完璧な内容だ。

 この川の過去を知る者としては、にわかに信じられない状況でもあるが・・。

 今更予定を変更する余地もないので、上流部に賭けるしかないな。

 とりあえず夜を過ごす為の準備を済ませておこう。

 飲料の類は真っ先に水場に漬け込み、高台の平地を均す。

 そして整地したところでテントを組み、寝袋や着替えを放り込んでおく。

 寝床が出来たら今度は釜戸やテーブルを整える。

 幸い手頃な石が近くに多かったので、今回は楽に揃えられて良かった。

 その後、薪集めをして今夜と翌朝の分の木を拾い集める。

 薪も乾いたものが多かったし、山肌も近かった事もあって特に苦労しないで集まった。

 それから夜を迎える準備の最後として、釜戸に薪をセットする。

どうにも魚影が・・

 枝のサイズを幾つかに分けて揃え、一発で着火するように組み上げる。

 地味な作業だが、手を抜くと更に面倒な事になるので、休憩も兼ねて地道に作業する。

 そして昼過ぎになってようやく、全ての支度が整った。

 これであとは竿2本と飲み物・トイレ紙だけの軽装で、上流部の釣りに専念出来る。

 相変わらずスッキリと晴れない空だが、気温は快適なままだ。

 なんとか魚を見られるようにやってみよう。

 テンバの前の淵からルアーで釣り上っていく。

 そして少し進んで右岸から小さな枝沢が出会うと、狭くて深い淵が現れた。

 ミノーのままでは攻め辛いようなので、スプーンに換えてTRYしてみる。

 すると2回目の投入で、底の方の岩陰から大きな魚影が浮き上がってきた

 そして中層までスプーンを追ってきたと思ったら、白い魚体を翻して消えた。

魚影が見えない

 「うおっ・・!」

 反射的にアワせたものの、針には乗っていない。

 デカい。少なくても35Cm以上あったな。

 その後、他のスプーンに換えて何度か投入してみたが、警戒されてしまったようだ。

 後ろ髪を引かれる思いでその淵を後にする。

 まさに遡上中のイワナだったと思うが、ここまでの間でようやく見えた初めての魚影がアレではインパクトが強過ぎる。

 しかしとりあえず魚が居る事はハッキリした。

 今度はスプーンを重用していこう。

 そのまま釣り上っていくと、テンバの前の淵とそっくりな渓相が現れた。

 浅くて長い感じのポイントなので、ミノーに換えて投げてみる。

 そして流れ込み付近に着水したミノーを巻き始めると、少し離れた所から下流に向かって一目散で逃げる魚影が見えた。

とりあえずテンバ確保

 8寸クラスのイワナのようだったが、どうやらルアーの着水に驚いたようだな。

 ルアーを追う余裕がなかったところが残念だが、とりあえず2匹目の魚影だ。

 しかしそれ以降は再び魚影が見えなくなって、とうとう釣り場も終盤だ。

 今回一番期待している淵に到達。

 ここは遡上止めの一歩手前にあたるカーブに沿った大淵なのだが、過去の実績は素晴らしいものがある。

 身を低くしながら慎重に淵尻近くまで近付いて目視してみる。

 しかし見える範囲に魚影は無い・・。

 それでもルアーを投入して丁寧に隅から隅まで探ってみる。

 でもやはり追ってくる影さえ見えなかった。

 期待していたポイントだけに落胆も大きい。

 では最後に遡上止めのポイントにTRYして戻ろうか。

厳しい状況

 実はこの遡上止めの滝は大場所だが、俺達的に今まで魚を釣った事が無いのだ。

 おまけに手前のヘツリはスタンスが小さくてバランスを要するので、ウェーダー装備では難しい。

 そんな負のイメージが多い事から、もう何年も竿を出していなかった。

 ・・が、今回は久々にTRYしてくれよう。

 ラジアルの渓流シューズなので、難無く滝壺に近付けた。

 相変わらずの迫力だが、魚が着くとしたらどんなところか・・。

 先ずはミノーで様子を見るが、ポイントの端まで波立っているので、魚が追って来ているかどうかもわからない。

 それでもルアーを幾つか換えて、やはりスプーンを投げた時だった。

 流れが速くてラインを見失いながらリールを巻いていると、不意に重く感じた。

 ラインが竿先に絡んだか・・と思って確認すると、問題は無く正常だった。

 それでもテンションが張るのを本気で不思議に思いながら巻き上げると、実は魚が釣れていたのだ。

ようやく釣れた

 驚きと同時に嬉しさが込み上げる。

 シルバーのスプーンの針に食っていたのは8寸弱のハイブリットだった。

 慌てて足元の水溜りに確保して撮影して余韻に浸る。

 初めてこのポイントで釣ったな。

 釣ったというより釣れていた感が強いが、まあ良いだろう。

 もはやI沢初のボウズを覚悟していたし、焼き魚も不可能だと思っていたので、色々と救われた一匹になったな。

 その後も暫し粘ったものの、追加の釣果は得られずに撤収。

 唯一の釣果を持って、川通しでテンバまで戻ったのは夕方だった。

 まだまだ陽が高い時間帯だったが、貧果と空腹に打ちひしがれて休みたい一心である。

 獲物を捌いて串に刺したら水際の日陰に保管して、冷やしておいた缶ビールを勢いよく流し込んだ。

 ようやく生き返った感じだ。

釣果は物足りないが

 そして早々に焚火を熾したら、晩飯の準備だ。

 ・・といっても、今回は荷物の関係で米は炊かずにコンビニのおにぎりで済ませる事にしてあるのだ。

 実質的に焚火は焼き魚用と、ゴミ処理の為である。

 陽が傾いていく中、焚火が安定してきたので魚を火にかけて着替える。

 このタイミングでテントの中の寝袋を広げておき、寝る準備も済ませておくのだ。

 乾いた衣類に着替えてサッパリしたところで、魚を焼きながら晩飯を食べる。

 空は変わらず曇っているものの、幸い夕立は無さそうだ。

 乾き物のツマミで焼酎を呷りながら、魚の焼き加減を調整する。

 そして周囲もだいぶ暗くなってきた頃、ようやく焼き魚が完成した。

 水場から新たに缶ビールを出してきて、I沢に完敗・・否、乾杯。

 焼き魚にかぶりついてみると、最高の仕上がりだ。

憩いの時間

 この味わいの為に来ている。

 食べ終わってマヅメが極まった頃、テンバの前で再びルアーを投げてみたものの、やはり反応は無かった。

 完全に暗くなった19時過ぎまで河原で呑んでいたが、曇った空は星空を隠している。

 今日の内容では明日の釣りも心許ないが・・あの尺越えと遡上止めに期待しよう。

 19時半頃に就寝。

 

 翌朝。AM5:20頃に目覚めると、すっかり晴れているようだ。

 朝の冷え込みも無く、気温も程良い感じである。

 テントから出たら、先ずは出しっ放しのルアーロッドで周辺を探ってみるが、やはり不発。

 程々に諦めたらテンバに戻ってバーナーでお湯を沸かしながら、もう一度焚火を熾す。

 朝食はカップ麺と、インスタントのコーヒーだ。

翌日は快晴

 周囲の山を朝日が照らすが、俺の居る渓底まで陽が届くまではまだ少し掛かりそうだ。

 食事を済ませたら焚火を維持しながら、テンバの撤収に掛かる。

 そして8時頃、全ての片付けが完了したので、昨日同様に軽装で釣り上る。

 今日は要所毎にテンカラも使ってみる。

 事前に練習しておいたおかげで問題無く毛鉤を操れたと思うが、とりあえず魚影が無い。

 そして尺超えが見えたポイントに到達しても今日は姿が見えず、そのまま遡上止めまで釣り上っても魚影を見る事は出来なかった。

 物足りない気持ちのままテンバまで戻り、荷物を回収してからも往生際悪く釣り下る。

 その後、何事もなく昼頃に入渓地点まで帰還した。

 

 今回は俺達的I沢史上かつてない貧果を経験してしまったが、唯一の釣果はそれなりに価値のある一匹になったと思う。

 どうしてこれほど魚が少なかったのかは知る由もないが、そんな状況に疑似餌だけで挑んだのは不運だった。

 餌釣りの竿を持ち合わせていたとしても貧果は避けられなかったとは思うが、この釣行はまたTRYしたい。

 

かつてない貧果





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